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食品スーパーマーケティングの黄金律④

今回も食品スーパーの繁盛化の鉄則をお届けします。特に店舗面積が350坪程度未満の企業の皆様に読んでいただきたい“大手に飲み込まれない個性が輝くSM作りの視点”です。

(1)現在の環境を正しく理解しよう
全国的に見られる状況として、規制緩和を契機とした大型店の増加は市場の飽和を引き起こし続けてとどまることをしらない。広い店内を多くの商品で埋めながら品揃えを充実させ顧客に購買時の選択肢を与えると同時に、価格競争を引き起こしながら小売価格を引き下げている(特にイオングループが顕著)。その結果として競合する小型店は利益を上げるのが難しくなってきているのが現実です。

(2)大型店との競争でまず認識すべき事
①全面的な対決をおこなってはならない
②全面的な対決をせずに利益を拡大することを最優先で考えねばならない
③自店が集中して伸ばすべき分野は独自固有の長所となるレベル(その分野は商圏内で最高水準、一番レベル)まで伸ばしきらなければならない
④そのためには、常に商圏内の競合店の状況を正しく客観的に認識する
⑤消費者がその分野のどの部分を重要視して見て、どのように評価しているかを理解する

(3)明らかに大手の小売チェーンの店舗と差別化された店作りを目指す
小型店の場合、“大型店と同様の構造の店舗”の縮小版を作ってしまうことが最も危険です。それよりも一風変わったユニークな特徴を持つ店を作る発想が必要です。標準的な大型店のような総合的な品揃えと常に一定水準レベルの確保を意識した店作りはとは違う、一芸に秀でた確かな専門性と買い物の楽しさ、売り場・売り方の変化が存在するように仕組むことが大切です。

(4)限られた店舗面積をフル活用する売場の運用
店舗面積で競合の大型店よりも劣る小型店の場合、大型店と同様な標準的な売場の使い方を行っていては全く対抗が出来ません。限られた面積を最大限に活用するためには、①営業時間の延長、②時間帯別展開アイテムの変更、③圧縮法(可能な限り商品を詰め込む)、④欠品の無い補充発注体制構築 等を実施しなければなりません。人員シフトと作業のシステム化の工夫は必要となるもののこれも小型店の試練として積極的に克服する必要があります。

(5)通常の標準型の食品スーパーにはない雰囲気のある店作りが必要
小型店であるため店舗構造上の制約がもともと出やすいものです。そのため店舗の構造で勝負するのではなく、通常の標準型の食品スーパーにはない雰囲気のある店作りを行うことが重要です。また「商品の品質管理」「きめ細やかな店舗運営」も差別化の大きな要素となります(品質管理などに関しても大型店以上に目の行き届いた管理が必要になるということです)。資本力や規模での勝負に巻き込まれないようにするには、確かな知識や技術、そしてそれ以上にお客様への愛情と商売に対する情熱が表れた店舗政策をとることが重要なのです。こうした考えを従業員一人一人に理解してもらい、働く動機付けをすることが成功の大きな条件となります。

(6)お客様が好む買いやすい店作りを行う
小型店でも大型店と変わらず、清潔感のある店作りと顧客思考で買いやすい売り場作りを行った上で、店舗運営を行わなければならないことは言うまでもありません。「買い物の流れ」、「商品同士の関連」などを考慮しながら商品分類を顧客から見てわかりやすく打ち出しながら通路の取り方、什器の配置、商品レイアウトを見直しを行います。また顧客には特定の商品の訴求ポイント(商品の利点と特徴)を販促物(チラシ、POPなど)でわかりやすく表示する必要があります。

(7)近隣客の利便性を重視しながらも、あくまでも生鮮食品で特徴を出す
小型の食品SMの場合、生鮮食品でより特徴を出さないと“標準型間に合わせ需要対応の店”となってしまい、コンビニエンスストアとの差別化でさえ難しくなってしまいます。今後の競争激化を考えれば生鮮食品と言われる商品以外にもペリシャブル~腐りやすい商品(和日配、洋日配、惣菜、ベーカリー)などで特徴が出る店とする方が有利になります。そして店内商品の鮮度を常に高く維持する努力を行っている店、鮮度の高いうちに売り切っていっている店として消費者に店を認知してもらえるように方向付けをしていくことが大切です。

(8)大手のチェーン店以上に商品にこだわった店作りを行うことが重要
商品にこだわるという事は何も変わった商品を置くと言うことだけではありません。求めるべきこだわりとは、日常利用する商品ひとつひとつを、徹底した商品のポジションと特性、属性に分けて意味づけし商品の価値を掘り下げて理解することです。同時に商品編成を見直しと商品力強化を「価格訴求」に流れず「商品の価値訴求」に注力しながらおこなうことです。競争が有る以上価格訴求は当然必要なことですが、商品価値の追求を疎かにして、「安かろう悪かろう」で販売しても早晩お客様に見抜かれるようになってしまうからです。特にいくらこだわりを持った商品の仕入を行っていても、店頭で何の訴求もしていなかったり、またその商品の管理が不十分だったりすると、仕入時の思い入れは消費者には伝わらず、商品も売れないままということになりかねないことに注意しなければなりません。また自社の「企業としての存在価値」「良心」をお客様に対する売り物の一つにしながら提案型、思想訴求型のスタイルのスーパー作りを行っていきたいものです。

(9)小型店は「販売とサービスの質」をマンパワーを原動力に向上させ大型店と勝負する
商品、売り場作り(店舗)、販促、接客・サービスという要素の内、マスプロ・マスセールスの技術で資本力のある大型店が成功を収めることは容易に予想されます。逆に小型店、小規模チェーン店が勝ち残っていくためには、本来は全ての面での質と競争力を向上させるべきですが(特にあくまでも商品の良さにはこだわるべきですが)、大型店が必ずしも優れているとは言えない人が関与する比重の高い、「販売とサービスの質」、つまり挨拶からスタートする接客サービスを向上させることが不可欠なのです。

(10)「販売とサービスの質」の向上は、資源が限られた企業や小型店でも十分チャレンジできる重要なテーマである
わかりやすい表示を商品に付けたり、笑顔の接客を実行したり、顧客のクレームに対する親身な対応の実行、寛容で柔軟な返品・返金制度の採用は必ずしも多くの資源を必要とはしません。仕組み作りを行いやる気さえあれば小型店でも十分に実行できることです。特に「販売とサービスの質」の向上においては、必要となる目先のコスト以上に長期的に見て顧客が継続して買い物に来てくれる(帰ってくる)関係を作る思想が社員に理解されているかどうかをチェックすることが重要です。これさえ実践できれば将来的には利益となって店に還元されてくるはずだからです。

(11)大手チェーンでは真似出来ないきめの細かい販売方法、接客サービスを採用する
大型店や大手の小売チェーンでは多店化を容易にするために標準化、単純化されたローコスト・オペレーションを前提とした店舗政策をとってきます。小型スーパーの場合、大手小売チェーンとは戦う土俵を変えて全く商売の質を変えてしまうことが重要です。大型店の店が店の運営レベルで売りやすい店作りやシステムを採用してくるのに対し、小型スーパーの取るべき道は小型店としての超客密着・超客思考の店作りと販売システムを取ることです。

(12)標準型のチェーン店とは全く違った小型店らしい機動的な販促で情報提供をおこなう
通常大型のチェーン店の場合、数ヶ月前から計画された販売・販促計画にのっとって、仕入れに穴が出にくいように無難に攻めてくるものです。そこで小型スーパーはできるだけ、気候の変化や環境の変化を睨んで引きつけた状態で機動的な販促を生鮮品中心におこなっていくべきです。

(13)小商圏対応型の既存客のリピート購買を促す販促を展開する
再度、自店の商圏内の顧客の掘り起こしを1軒1軒行なってはどうでしょうか。伸びている多くの企業が1年に1度は全戸訪問を行っています。これらの掘り起こしは既存顧客の維持と新規顧客の開拓を目標とするものですが、掘り起しが終わった後の店頭では原則的に、新規客の獲得の努力以上に既存客の満足と継続的な来店促進の努力を行うようにしていきたいものです。インプロ商品強化、ハンドビラ、DM&FAX、会員制度等を組み合わせながら、顧客の固定化を促進するのです。

(14)機動的に旬のおいしさをタイムリーにお客様にアピールしていく
生鮮食品で売場にポイントを作り特徴を出していくことには目が行きがちですが、それ以上にシーズン性の訴求をタイムリーに行う視点を持つことが重要です。そのためにはその日仕入れた商品の中で、もっとも旬でお買得の商品をセレクトし、訴求していくということを続けるべきです。また惣菜等でも旬の素材を活かしたメニューの提案をしていきたいものです。また定番にプラスして一定量は旬商品を導入し訴求し続けることが大切です。

(15)買い頃価格をつかんだ値付けと競合店に対し柔軟な売価変更体勢を取る
価格設定自体も競合となりやすい地域内の大型店自体が、センターコントロール型(本部集約、本部企画、本部意思決定型)で運営なされている事が多いということを理解し、大型店以上の機動力でスピーディで柔軟な値付けを行わなければいけません。特に価格設定に関しては、価格変動の激しい青果・鮮魚等の商品、集客商品となりやすい商品の価格動向に敏感にならなければなりません。多くの場合、大手の競合価格意識よりも中小の競合価格意識の方がなぜか劣ってしまっていて知らず知らずと顧客からは割高な店というレッテルを貼られている状態が多いということに注意したいものです。

(16)商圏内サービス一番の店を作る
見かけ上の効率重視の大手ではなかなか継続できない「ちょっとしたサービス」を明確にかつ積極的に打ち出した便利な店をつくることが大切です。便利な店の行うサービス例は以下のようなものがあります。可能な限りチャレンジしていきたいものです。
①調理・加工サービス
②取り寄せサービス
③出前サービス
④予約サービス
⑤車による移動販売
⑥何でも試食サービス
⑦無条件返品・返金
⑧品切れゼロ保証

(17)試食販売の徹底
食品の良さ(=おいしさ)は食べてみなければわからないものが大半です。そしてお客様が食べてみたくなる気分は「旬」=シーズン性に大きく左右されるため、常に旬を意識し、明確に店頭と販促で打ち出した上で徹底して試食の促進を行っていくことが重要です。旬の食材と料理にこだわり、従業員自身が味を知るように日頃から努力した上で、計画的、連続的な試食計画を作ってまわしていくことが大切です。

(18)商売の質を向上させる工夫を積み上げる
小型スーパーの場合、働く従業員が自分たちの行っている商売の質を日々向上させていくということに取り組む風土を創り上げなければならない。言い換えれば毎日の商売を少しずつ工夫して改善していくという事です。何の問題意識も持たず、何も変えないまま毎年同じようなことしかしていない店の業績は一度落ち始めると改善することが不可能に近いものになります。逆を言えば客から見て、明らかに良い方向に変化する状態が判りやすく見えるようにしていけば、一度落ちた業績もやがて改善していくことになるのです。

(19)地域のお客様の声が店作りや商品仕入、店舗運営のシステムに反映させる
地域密着型の食品スーパーとして、地域のお客様を巻き込んでいく形の経営スタイル作りを行っていきたいものです。そして経営者=従業員=お客様 の意識が一体化した小さくとも評判の良い食品スーパーを作り上げたいものです。

(20)従業員の心が変われば店は変わり、お客様の心も変わる
小売業では従業員の心はお客様の心に実は伝わっているのです。お客様に喜んでいただきたいのであれば、まずお客様の要望に100%対応する方向で従業員の心が変化しなければならないのです。そして従業員の心を変えるためには、まず経営トップ、幹部、店長の心が変わらなければならないのは言うまでもありません。そして「販売とサービス(共にマンパワーに依存する分野である)」の向上は、できるだけ優秀な人材を採用すること、継続して質の高い教育・トレーニングを実施していかなければならないということを意味するのです。マニュアル以上に「商売に対する心の教育」や「企業の価値観をハウスルールとしてあらわし伝え続けていく」ことが重要です。

  • 作成:2004-10-26 (火) - 岡 聡コンサルタントブログ
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