コモディティ消費～必要十分マーケットへの対応が急務

急激な環境変化が日本の流通業を襲っています。サブプライムローンの破綻をきっかけとした世界的な金融ショックが家計を直撃し、生活を見直すきっかけとなり、消費マインドと消費行動を大幅に変化さ
せたためです。

あらゆる業界でこれまで感じられなかったような大幅な変化が実際に発生しており、そのようなテーマで講演を依頼されることが多くなりました。消費引き締めモードの中でいかに企業の舵取りをしていか
なければならないのかというようなテーマです。

先日も九州を中心に食品スーパーマーケットのボランタリー・チェーンを展開する全国スーパーバリューという組織の総会の記念講演で福岡日航ホテルで講演をさせていただく機会がありました。スーパー
バリューは中小の食品スーパーマーケットが生き残りを図るために協業を行っている団体ですが九州を中心とした活動が四国、東北、関東へと広がっており当日はアソシエイツと呼ばれる協力食品メーカー、食品卸売り業の方もお招きし３４０名の参加の盛大な大会が開催されたわけです。（パーティではお隣の席が山崎　拓先生でしたのでちょっと緊張でした・・・汗）

食品スーパーの世界は今、第三コーナーを回った状態にたとえられるのですが、成熟する市場の中で大手を中心とした流通再編が進み、方向軸を失った地方スーパーの多くは廃業、倒産、Ｍ＆Ａ対象となっています。これからは街づくり三法の改正の影響で大手が地方スーパー、中小スーパーが得意としていた中小商圏へ進出してきますので今こそ自分たちの進む道を定め、信念とビジョンをもった経営に取り組む必要があるわけです。

当日私が講演しましたのは「変わる流通環境、変わる食品ＳＭ」というテーマでした。消費の変化がどのように大手企業の戦略に影響を与え、どのような闘い方をしないと中小スーパーは生き残れないかと
いう内容です。翌日には加盟スーパーの勉強会が実施され熱い２日間をご一緒させていただいたのですが、特に今現在の注目テーマとしてコモディティ型消費が増加しているというお話です。世間ではＰＢ商品という風に話され表面上理解されることが多いのですが、私はＰＢ化は手段であって目的にあらず、目指すべきはコモディティ型消費対応であると思っています。

コモディティ型消費とは生活必需品消費のことです。生きていくために最低限必要な商品群がこの対象となるわけですが近年は生活全般にコモディティ型消費が成長してきています。
よりわかりやすくご説明するとコモディティ型消費は「必要十分マーケット」と言えるものです。日本は世界的にみても付加価値をつけるのが得意な国です。商品もビジネスも成熟化が進み付加価値付け競争
の中で発展してきました。ところが足元をみると過剰な付加価値、つまり不必要で使わない付加価値がつけられている商品も多く、金融ショック後の節約消費の中でコモディティ型商品を低価格で提供するこ
とが小売業においてブームとなっているわけです。

スーパーバリューなどのボランタリーチェーンは加盟会社同士は独立企業ですので仕入の共同化、加盟会社間の生鮮産地連携などの活動などを趣旨と情報の共有を進めながら徐々に進展させていかなければなりません。徐々にではあっても、バイイングパワーを高めながら自分たちが求める必要十分商品が自由に調達できる環境作りを進めていく必要があるのです。

今、中小スーパーは卸売り業の得意先選別にも直面しており財務状況が良好でない企業は取引中止、保証金積み増しの要求さえ受ける時代です。まるで書店業界のようです。販売が読める大手の書店にはベストセラーが山積みされているが、販売力の無い中小書店にはベストセラーさえ配本されない、それ故さらに売れ行きが悪くなるという悪循環・・・。世帯所得は１０年間で１００万円も減少してきている今、生活者に財布の紐は厳しくなるばかりです。毎日の生活を支えるコモディティ型商品の品揃え強化は型数がそう多くなくても中小スーパーにとっては重要課題となってきています。ただしこの手の商品の調達は仕入交渉、買い叩き型の一時しのぎでは限界があります。特に小が大と闘うときには相当の工夫も必要です。このあたりの話は次回以降もご説明をしていきたいと思います。

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