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小売業革命 時流適応の商圏戦略(1972年)解説

小売業革命―時流適応の商圏戦略 (1972年)

小売業革命―時流適応の商圏戦略 (1972年)

この書籍出版当時、船井幸雄先生は39歳です。4冊目の書籍にして初めて小売業全般向けの経営書として出版されており量販店を主とした出店戦略などのあるべき姿などが詳細に説明されています。

おすすめしたい方→マーケティングを正統的に勉強したい方 《一押し》

(目次)
第Ⅰ章 昭和五十年には量販店は姿を消す。
第Ⅱ章 経営原則と小売経営
第Ⅲ章 小売業の力、集中力
第Ⅳ章 立地と規模の決め方
第Ⅴ章 これからの小売業
第Ⅵ章 これからの小売業経営の問題点
第Ⅶ章 小売業経営者が、いますぐやらねばならないこと
第Ⅷ章 特別資料

(帯の解説文)
ファッション化社会の主導権を取れ!
全産業はファッション・ビジネスの時代に突入した。とくに小売業・繊維産業はいかにこれを先取りするかが今後の最大の課題である。
(前書き文よりの著者自身の本書の要旨)
①日本には、マス・ファッションを主体としたファッション産業が一次的には成立するだろう。
②マス・ファッションが産業として成立する期間は、生活関連商品といわれる衣・食・住・余暇のうち、食品以外は短期間の寿命しかないのではなかろうか。
③ファッション時代は当然くるだろう。しかしファッションの企業化は、日本のそれが、ハイ・ファッション主体と考えられるだけに難しいだろう。
④小売業はアイテム競争の時代に入った。よりおおがたてん、大型ショッピングセンターが、時代の脚光をあびるだろう。
⑤昭和50年には、量販店は、なくなるだろう。
⑥人の使い方は、完全な人間性重視へと移行し、人間機械論はやぶれさるだろう。
⑦求人難は、解消され、未熟練の新卒者に高給を支払うことは、まず五~十年先にはなくなるだろう。
⑧給与は、労働時間に対して支払うものから脱皮し、付加価値を分配するものに変わるだろう。
⑨流通面におけるメーカー、卸、小売は、機能面は別にしても、経営面では、より一体化するだろう。
⑩「主導権をとるもの以外には利益はない」という経営原則が、今後は非常にはっきりしてくるだろう。

この書籍は船井幸雄先生が初めて著した小売業向け経営書である。当時の船井総合研究所は繊維関係の企業の業務と量販店出店指導がメインであったことが伺われる。ただし、ここで言われている量販店は今現在使用されている用語としての量販店とはかなり姿かたちの違うものである。パパママストアに対して単純化と標準化を武器に成長してきたマスプロ・マスセールス一辺倒のメーカー戦略、小売戦略をどう修正するかという視点で話が進められている。昭和四十年代に発展した量販店の商法が曲がり角に来る中、そのあるべき姿は脱量販店であると述べているところが興味深い。量販店の百貨店化も視野にいれた発言であるがこのような考え方はやがて日本の量販店が大型化するなかでジュニア・デパート化として実現されていくわけである。(そしてこれがアメリカのGMSと違った現在の日本の量販店、SCへとつながっていくわけである)。また物余りが続き成熟化が続く中、消費者の欲求がどう変わろうとしているのか、現在への対応ではなく将来にわたって何をするべきなのかをマクロな視点で語っているところが船井幸雄先生らしい。

最後の特別資料では第六回フナイワンマンセミナーのテキストが集録されている。このセミナーのサブタイトルは繊維業界経営者のための経営戦略セミナーとなっており、当時のクライアントが日本の流通業で最も成熟化と混乱が早かった衣料品業界であったことがわかる。船井流の経営法は本来、成熟化業界、成熟化が進む国で最も有効に利用されるはずの経営理論であるからどの業界にも通用する万能かつ最強の経営理論となっているわけだが当時、すでにその骨格の大半ができあがっていたことをうかがい知ることができる。ただし一番主義という言葉は固まっておらずトップ主義と言う言葉の中でとにかくトップになるために一番を作らなければ競争激化で利益獲得が難しくなってくると説明されている。一番化の手順と考え方も整理されているわけだが、本書だけでは一番化の全貌は理解できるようにはなっていない。また小売業界で成熟化が進んだ場合にはお客様対応だけを熱心にしているだけでは成果が出ない。成果は競合対策を行うことで出ると喝破している。当時の状況を考えると日本経済はまだまだ右肩上がりの時代であるわけだから、競合対策以上に数の論理でとにかく出店で企業成長を考えていた企業が多かったと考えられるが、既に競争優位性のない業態や状況の悪い立地の二番店以下の成績不振に陥っていることを見抜き、チェーンストア理論、スーパーマーケット理論だけによる経営推進の矛盾を指摘していると言えよう。とはいえチェーンストア理論、スーパーマーケット理論を真っ向から否定しているわけではなく世界で最も成熟化が進んできた日本ではこれらの理論の理屈だけでは企業成長が難しいと述べているわけである。単なる価格の安さだけでなく消費者が望む付加価値の確保と提供が売り手の使命であり自己実現を求める生活者(当時の表現は消費者)への真の対応であると説く。またショッピングにレジャーの要素やついで買いの要素を付加していくことの必要性、豊かさを手にした買い手が商品の購買に関して上昇決定から下降決定へ変化してきているという視点の鋭さには驚かされる。39歳当時の船井幸雄先生の仕事振り、船井総合研究所の創世期の仕事振りがうかがえることも興味深い。

  • 作成:2009-08-22 (土) - 岡 聡コンサルタントブログ
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