船井幸雄の新経営革命―「満腹の時代」をどう超えるか (PHPビジネスライブラリー 1983年)
この書籍出版当時、船井幸雄先生は50歳。バリバリのケンカの船井時代です。
おすすめしたい方→マーケティングを正統的に勉強したい方
<表紙説明より>
「満腹の時代」をどう超えるのか
多くのトップ企業で注目を集める経営革新のポイントとは?”経営指導の神様”と呼ばれる著者が、変貌する近未来を鋭く見通し、実践的対応策を明確に指し示す待望の書!!
この書籍はPHP研究所から発行された現場ビジネスマン向けの実務書シリーズの1冊である。
PHPビジネスライブラリーのシリーズの説明を見ると以下のような説明がある。
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発刊にあたって
厳しい経済環境・国際環境の中で生き抜く現代ビジネスマンには、すぐれた実務能力はもとより、幅広い視野と教養に裏打ちされた高度な”実力”が強く望まれています。
この「PHPビジネスライブラリー」シリーズは、そうした実力向上の糧となり、仕事と人生の指針となることを願って発刊するもので、いま本当に必要な知識・情報を厳選し、各層のビジネスマンに実践的に役立つ書として順次お届けしてまいります。
このシリーズが、その名の通り、あなたの座右の手軽なライブラリーとしてお役にたつことを、心より念願いたします。
PHP研究所
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本書が発刊された1983年に私は大学を卒業し社会に出た関係から、当時のことを思い出し懐かしさがこみあげてくる。
大学ではからっきし勉強をしていなかったが経済学部であったため当時流行していたセオリーZなどは読んでおり、日本型経営の優秀さ、アメリカの自動車会社がトヨタ詣でをはじめたというようなことが話題になった時代だと思い出した。1985年9月22日のプラザ合意が始まる夜明け前であり強い日本、弱体化したアメリカという構図の中でレーガン大統領が貿易赤字、財政赤字といういわゆる双子の赤字の解消に躍起になっていた時代である。とはいえ、日本国内の景気は悪く買い控え心理が増大し、物が売れない時代が続いていた。そんな時代の書籍なのである。
物が売れずに市場であまってくる中、このもの余りを旧来の経済の仕組み行き詰まった結果と船井幸雄先生はみていた。それは「工業化社会から情報化社会への転換ということであり、それは物から心や文化へ、マーケティングは売り手から買い手に完全に移ったのだよ」と読者に訴えかけていたのである。
つまりこの時期、転換点を迎えた”修羅場”の経済環境の中で正しい手を打とうと読者に呼びかけるために本書は書かれたわけある。その中で第三章では具体的に船井流の小売理論・経営理論が説明されている。
「奇」の経営は失敗する!=第一原則
・原理原則は踏みはずすな
・統制は経済力を低下させる
「精鋭な参謀集団」づくりをはかれ!=第二原則
・参謀を使いきれるトップになれ
・「参謀力」にまさる企業が勝つ
「既存客第一」の経営に徹せよ!=第三原則
・「物的」な面でのイメージ向上戦略の時代は終わった
・今こそ古い客を大切にせよ
「変化適応型組織」に変身せよ!=第四原則
・「計画的無変化対応法」で修羅場を乗り切れ
・集権主義をなくせ
・「適所適材思考」から「適材適所思考」へ
「強気の経営」がこの壁を打破する!=第五原則
・コストを考えるな、繁盛を考えろ
・もっと積極的に客思考せよ
この章を読むと、閉塞感ある現在の状況と驚くほど似ている状況、本書で船井幸雄先生がいう下手をすると大恐慌直前かもしれない、そういうときには原理原則に返って行動しなければならないと訴えかけてくる気迫とそのルールは今も立派に通用するものだと思う。特に好況期の手法と不況期の手法は何が違うのかをわかりやすく説明している部分に普遍性がある用に思う。そういう点で時代を超える経営実務書として名著の一冊であることは間違いない。
船井幸雄先生が50歳の時に書いたこの書籍はPHPのアカデミックで実用的なシリーズの中の出版からか、小売業・流通業の世界の天才コンサルタントの名を欲しいままにしていた船井幸雄の柔軟な発想と腕力がうかがい知れて後輩であり部下であった実務家コンサルタントである私はとても楽しい気分になれる。
反面、本書からもマクロの善を追求するためには競争が必要という考え方が中心であり競争社会に身をおくビジネスマンには実務書として役立つ内容になっているものの競争の考え方が70年代後半から洗練されてきているのがわかる。人間性が重要という考え方とともに非競争、共存・共生という発想が行間からチラリと垣間見えるところが興味深い。
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- 船井幸雄の新経営革命 (1983年)解説 from 経営コンサルタント 岡 聡