前回に引き続き低価格化時代の話です。
先日、ユニクロのguで990円ジーンズ、そのguが入店しているダイエーの平場でイオンに引き続き投入された880円ジーンズの両方を見ました。アパレル企業出身の岡としては多分自分のプライベートウェアとしては両方とも購入することはないと思います。その理由はプライドであるとか見得とかではなくさすがにブランド力と品質、その両方のバランスを見極める力は一般の人よりは強いからです。
ユニクロのguの990円ジーンズは初めて丹念に見ましたがなかなかしっかり作られていてビックリしました。対してダイエーが相当力を入れて展開している880円ジーンズは「これ大丈夫?」というような出来でした。正直ちょっとばかり期待していたのですががっかりしました。
この2つの商品の差においては決定的であったのが生地の質とパターン、縫製の差です。guはユニクロで徹底的に本格的なジーンズの研究を行っていた歴史を感じさせるものでした。ユニクロと違いguは自社の協力工場で生産しているわけではなく仕入商品です。しかしその商品は明らかに仕様書発注がなされておりファストファッションの流れを汲む商品としてしあがっていました。店頭ポスターで男女が跳躍しているかなりハイイメージの商品訴求を行っていることも原因ですが、興味がある人間からするとちょっと買ってみようかなという感覚の商品です。商品としては従来3,980円から5,980円クラスの商品を990円クラスに戦略的に引き下げたというものです。「それ、どこの?」と聞かれて「これはユニクロのguのだよ」と返答して恥ずかしくないレベルの商品だったと思います。
これに対してダイエーの商品は正直「それどこの?」と聞かれたら返答するのが恥ずかしく「これ、えっーと、安かったから普段着用にダイエーで買ったんだよね・・・」という風な注釈無しにはおれないタイプの商品でした。
各50点満点でguは品質満足度40点、ブランド力満足度は30点で計70点。ダイエーは品質満足度20点、ブランド満足度20点で計40点というような感じです。ですからダイエーが安いといってもguは70÷990=0.070であり、ダイエーは40÷880=0.045という感じです。つまりお値打ち感はユニクロが1.5倍以上高いわけです。こういう算用が頭の中でくるくる回ったのでした。
今、低価格対応というだけで話題になることが多いのですが実は早晩、価値の伴わない低価格は駆逐されると思うわけです。考えてみればguにはユニクロがニ十年挑戦してきたSPA発想による良品廉価商品づくりという仕組みがバックにあります。対して大手GMSの商品は本気レベルで海外生産工場の管理に取り組んだり、品質検査を行ったりするというプロセスをすっ飛ばしてとにかく作り上げたという流れがあるわけです。しかしダイエーの880円ジーンズは従来の価格でいえば1980円程度の価値のものにしか私には見えませんでした。着れたら何でもよいという価値観への対応なら古着屋さんにいけば低価格の商品はいっぱいあります。
目先の時流適応も大切ですし、初めの第一歩としては悪くない戦略なのかもしれません。しかし今ビジネスで考えることは「安く商品を販売すること」ではなく「安くても満足してもらえる商品を製造販売する仕組みをつくること、そういうことに正面から取り組める組織風土をつくること」なのではないかと思えてしかたないのです。
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- 正しく低価格化の波を受け止める from 経営コンサルタント 岡 聡