大丈夫か？内向きニッポン。アジアは外向きだ！

意識して海外に出て行くようになって１０年ほどになります。今年もタイ、シンガポール、香港、マレーシア、上海、ソウルに行きました。このような海外渡航を続けてきた中で、最近痛切に感じるのは、日本の国内の閉塞感とアジア諸国の積極成長志向です。少し整理して考えたいと思います。

９７年の香港の中国返還後、中国の改革開放政策が成功し、中国全土の香港化が進み０８年北京オリンピック、本年の上海万博を経て中国は世界第二位のＧＤＰの有望市場へと変化しました。中国は大きな危険性を孕みながらも鄧小平、江沢民、胡錦濤という指導者のもとに急成長を遂げました。韓国は８８年のソウルオリンピック後、９７年のアジア通貨危機、ＩＭＦ危機などの大混乱を経て、財閥解体後、金大中が決断したＩＴ化以後、国家をあげての産業育成に励んでポスコやサムソンの存在感の向上とともに韓国という国家のブランド力を高めて成長国家としての自信を取り戻した。シンガポールは４５年前の６５年にマレーシアから追放されるもリーダーであったリー・クアンユーは資源と産業不足を積極的な外国資本誘致により０８年には国民一人当たりＧＰＤが日本を抜き話題となりました。

０９年は３７，２９３ドルとアジアではカタール、日本についで３位となっていますが、これは７０年の大阪万博訪問時に小学４年生であった筆者のシンガポール館の印象からは想像することは全くできません。当時は南方熱帯地方の小国家のイメージしか存在していませんでした。現在も一党独裁・開発独裁と揶揄されることもあるシンガポールですが、リー・クアンユーは今も顧問相、息子のリー・シェンロンは第３首相として、投資と開発に積極的に取り組んでいます。本年久しぶりにマレーシアに入りましたが、同じ国家であったシンガポールとは年々差を詰めることは当分出来ないように感じます。マレーシアは今後も継続的な成長が期待される東南アジアの優等生ですが、シンガポールの思い切りの良さと割りきりには追いつけると思えないからです。小国だからこそ世界最先端を集めることに集中し続け投資を続けるシンガポールは凄いの一言です。ＩＴに関しても金融に関しても、空港や物流の拠点としても積極的な投資を続けていて街が年々大きく変化しているのです。増殖を続けるチャンギ空港は設備の充実もさることながら、時代対応した格安航空会社専用のターミナルも整備されています。また医療技術や病院施設に関しても、日本に比べてもほとんどひけを取らないほど高水準だそうです。日本のバブル崩壊後の閉塞感とこれらの国の成長を見比べてきた筆者は最近、ため息が多くなっています。

このような感想や危機感を持つことができるのが海外旅行の良いところです。筆者は政治や世界の今後について語るほどの見識は持ち得ていませんが成長を続けている国には強いリーダーシップと国策として取り組んでいる重点投資分野が明確に存在しており官民あげて国家の競争力強化に取り組んでいるということは肌感覚でわかります。対して豊かな国である日本は、その豊かさが部分的に崩壊してきており、あわせてリーダーシップの乏しい政治がさらに体質の転換と新しい産業の振興の邪魔となっていると思えてしかたありません。そしてその日本の中に存在する企業自身、そしてその企業で働く社員も国家と同様の内向き、被害者意識にとらわれ過ぎているように思えてならないのです。衰退分野から成長分野への大胆なシフトが本当に不可欠なタイミングになっているのです。

船井幸雄最高顧問がいつも話すように、人は常にアタマをよくする努力をしなければなりません。過去の栄光にとらわれ、世界レベルの時流適応に背をむけ、これからの日本と日本企業が存在できるはずはありません。常に新しいチャレンジに取り組むことが大切なのです。今一度「変化こそ不変の原則」であるはずだということを思い出して、成長分野への前向きな挑戦をまず自分自身から取り組んでいきたいと思います。