これからの業界再編は水平統合から垂直統合へ

日本では各業界で再編と構造改革が進んでいます。これは従来業界内で複数の企業が勃興ししのぎを削っていた国内競争が、国内市場の縮小予測の中で生き残りをかけて統合をはかろうとしているのが原因です。各業界大手は３社程度に集約されていくのが自然というような流れです。

銀行の統合などに続き百貨店の統合、スーパーの統合などは珍しいことではなくなってきました。シェアを確保しながら規模拡大によるメリットを最大限に享受しようという考え方です。統合のメリットは仕入れコストの低減と業務コストの削減です。規模のメリットによってバイイングパワーを最大化させ、良い物を安く仕入れようという流れです。業務コストの削減は別個のシステム開発・運用、研究開発の無駄を削減するということがキレイな話として存在しますが、さらに小さな本部を作って無駄な人員を削減するということが更に大きなコスト低減につながるという考え方です。こういう流れになってくると国内の雇用問題においてはたくさんの問題が生まれてきます。一部の戦略・戦術的仕事を担う中核社員以外は末端のワーカー的労働者となってしまうということです。規模に比較するとポストが減少し、明るい未来を信じて一所懸命働けば偉くなれるという構造も職長クラス・現場のリーダークラスまでとなってしまいがちです。特に年功制度が中途半端に崩れた日本の企業では大抜擢もなかなか難しく、若者に仕事で未来を明るい描かせることが難しくなります。

もちろん企業全体の成長が促進されればポストは発生するのですが、国内マーケットが伸びない中での統合では全体が維持・縮小する中ですから業界リストラという様相でポストはなかなか産まれません。解決の道は今後も大きな成長期待ができる海外市場へ進出ぐらいです。その上、統合を実際にしてみるとそう劇的に仕入れコスト提言と経費コスト削減ができないものだということもわかってきます。失われた２０年の中でデフレ化が進んでおりコストの低減にもそう大きく踏み込めませんし、小さな本部を目指した従業員リストラも日本の企業の体質にはあまり似合わずスピーディな実現ができないからです。そうはいってもということで大手は仕入れコストと経費の引き下げに取り組んでいますが最近はその流れが大きく変化してきています。それはこれまでの水平統合によるメリットの追求だけでなく垂直統合によるメリットの追求に小売企業が動き出しているということなのです。

言い換えればこれは小売企業がメーカーを買収するというような流れです。特に多様な商品を多数生産しなければならない食品業界ではこのような動きが加速しつつある模様です。よく似た流れにＰＢ商品戦略があるのですが、これまでの日本のＰＢ商品作りは「一定量を引き取るから売れ筋ナショナルブランド商品のちょっと仕様違いを安く卸してください。その商品には共通のＰＢ商品のマークをつけてくださいというものでした。
しかし世界的な資源・エネルギー競争の結果、原料価格の引き下げが難しいメーカーはメーカーとしてのできる範囲内での対応しかしてこれなかったのです。ところがこの環境が変わりつつあるのです。小売業がメーカーを傘下に収め強烈な生産指導と経営指導のもと効率経営を追求させようという流れです。わかりやすく言えばＳＰＡ化の推進が各業界で行われているということです。流通構造が複雑な日本国内では、直接自分たちが欲しい商品を希望するコストで作れる環境を自力で構築した方が早いということなのです。卸や物流・梱包コスト、商談労力なども削減できようという考え方なのです。わかりやすくいうとユニクロモデルの主として国内生産への持ち込みです。このような流れが加速しているのです。メーカーのメリットとしては開発力があっても売り先が定まらず、売りに行っても値切られてばかりで利益がでないという状態よりは、売り先が確定して物づくりに打ち込めるということで小売傘下に入るという構図です。

これまでＳＰＡは海外の生産力を活かしたものが多かったのですが、これからは国内の生産力を活かしたものが増えると予想されます。国内売上の全体額が伸びない中、流通の川上から川下までの中での無駄取りが小売の目標となってきているのです。日本国内にとどまるメーカーは今後、自主独立を貫くのか小売傘下で生産特化するのかを問われることが多くなってくると思われるのです。