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今の時代の取引先との関係性

経営コンサルタントという仕事柄、たくさんの経営者の方々と話をします。その話の中でよく出てくるのが「昔は良かったです。今の時代だと通用しないのですが、当時は何でも有り有りでしたね。」という話です。

売り手と買い手の関係も今のようなドライな関係ではなく、いわばネットリとした関係でした。セールスとバイヤーの関係は貸し借りで動いており、売り手のセールスは自分の予定売上達成のために、お願いして納品させてもらう代わりに販売応援や棚卸などにも出かけるというような具合です。最近は、不公正な取引や下請けや取引先いじめはやめましょうという風潮である上、会計上も粉飾決算に繋がりかねない商品の押し込みや架空計上、業界横並びの談合的価格調整などもっての他という具合です。商取引を契約の範囲の中でより公正に行いましょうということなのです。

商品パンフレットや企画書をもとに提案し、契約達成すりば、期日通りに納品する。約束の期日に支払いをお願いして回収する。という行動をクリアに実現するわけです。ところが最近、気になるのはそういうクリアな商取引をする中でセールスとバイヤーの力量が低下しているのではないかということです。昔はどの業界にも豪腕のバイヤーが存在して取引先のセールスを振り回していましたが、そういう方は今はめったと目にしません。またバイヤーにくらいついていくセールスもめっきりと減ってきました。

先日も、ある小売業でお取引先を集めた総会の講演を行い、講演後の懇親会で幹部と取引先セールスの方々のお話などを見ていた時に営業の質の変化をまざまざと感じました。それは懇親会が終わりに近づいた時のことです。あるセールスが社長の所にやってきて「今日はありがとうございました。この辺りで失礼させていただきます」と話したのです。その社長はセールスに「あと10分程度で散会になるので、もうちょっと待っていてくださいよ」と言ったのですが、その若いセールスは「いえ失礼します」と言って帰っていったのです。社長は「人間として損な生き方をしているなぁ。この会の目的が共により太い取引をやっていきましょうという趣旨なのに、なぜ逆効果のことをするのだろうなぁ」というようなことをこぼしていました。

今の時代に取引先を集めた総会への参加は今の時代、メーカーにとっては負担なのは誰しも百も承知です。だからこそセールスの人にとっては”出てこない会社もあるのに忙しい時間の合間をぬって参加したのだから、そんなに無理言わないでよ”という気持ちがあったのでしょうが、本当に損なやりとりでした。

本来、会への参加を目的とするのではなく、関係性強化を目的とせねばならないことがわかっていたら、このようなことにはならなかったわけです。社長は明らかに気分を害しており、どうしても帰らねばならない用事があるなら「◎◎の約束がありますので、誠に残念なのですが先に失礼させていただきます。今日は本当に有意義な一日でした。次回も楽しみにしております」と言えば良かっただけです。

終了時間は予定通りだったので余計に気まずい一件でした。若いセールスの方が企業対企業の付き合いの基本をわかっていなかっただけですが、これが日本の商取引も希薄な関係にだんだんなっているのかなと考えさせられる一件でした。

テレビでは日本の首相や大臣の外交のまずさと成長国の影にかすんで相手にされなくなりつつある迷走日本が時折見かけるようになってきました。本来、日本人と日本の企業が大切にしていた家族的なホットな付き合いやおもてなしの心が減ってきているように感じます。この傾向に意識して歯止めをかけていく必要性が出てきているのが今の日本の現状なのだと思います。

  • 作成:2011-02-01 (火) - 岡 聡コンサルタントブログ
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