農業のビジネス化のポイントとは

政治の世界の中でも「農業政策」というものが最近ほど熱く語られるようになったり、各党が力を注ぐようになることは最近は無かったことではないかと思います。

農業ビジネスにも関わってきたコンサルタントとしては少し心境は複雑です。と言いますのは「日本の食料自給率が低い」「だからもっと農産品の生産量が上がるようにどんどん助成策展開やや補助金供与
を進めていく」というようは発想だけでは日本の農業は立ち直れないからです。

良く考えて欲しいのは”なぜ日本の食料自給率が低くなってしまったのか”という背景です。この原因は簡単です。農業だけでなく林業、漁業などもそうですが一次産業では飯が食えない状態になってしまっ
たからです。二次、三次、四次産業の方が所得が高く一次産業の従事者は低所得で飯が食えなくなってきているのです。その原因は低生産性だからです。これは一次産業従事者の働きが悪いという話ではすみません。その主原因は作っても作っても経費の回収さえできないほど儲からないビジネスに一次産業が成り果ててしまっているということです。

例えばわかりやすく解説するとスーパーの店頭で１００円程度の価格で売られている野菜などの農業従事者の手取り価格がどの程度かわかっておられるでしょうか。驚くことにそれは約２０円程度のものな
のです。その上スーパーの店頭価格はデフレ化の流れで下がる一方なのです。ましてや小売業が再編淘汰されていく流れの中で年々大手小売業は仕入れ交渉における発言権やバイイングパワーを高めてきており、容易に値上げができる構造ではないわけです。

日本の農業を守れと声高にいう人も一人の消費者として買い物をする時には”できるだけ高い価格のものを買ってあげよう”とは思わないのが普通で”少しでもよいものを安く”と考えるのが当たり前なの
です。このような市場原理が働く環境の中で日本の一人一人の農業従事者は個人事業者として考えるととても零細なわけです。ですから小売業でも商店街の小さなお店がなくなってきたのと同様、淘汰が進み跡継ぎ世代が農業を敬遠する環境になってしまっているのです。

その上６５歳以上の高齢者の農業従事者が大きなウェイトを占める日本では１０年先は何もしないと真っ暗なことは間違いないわけです。この解決策は少しでもお客様が納得する範囲の中で農産品の価値を高めて価格を安定させ、手取り収入所得を向上させる施策を官民が考えていく必要があるわけです。要は農産品の価値なりの価格が通る仕組みを作り上げる必要があるわけです。当然、大規模農家化するという手も王道としてあります。それでもそれだけでは規模のメリット、特に合理的経営による経費のダウン、安定供給の安心感を基にした売り先確保という流れしか作れません。

日本の農産品の品質は世界的にみてもとても高いものがあります。香港に行くとわかりますが日本の農産品がとても高いウェイトで売場をしめていますしお客様も日本の価格以上の値段で普通に商品を買い求めています。

私たち船井総合研究所の農業ビジネスへの取り組みは生産者が自立できる環境＝儲かる構造をどのように作ればうまくいくかという発想から取り組み方法を考えて進めているわけです。その過程では流通業の仕組みを理解して革新を図るという発想がとても大切になってくるわけです。そこでは農産品だけでなく他の工業製品や商品と同様、伝統ある船井流のマーケティング力が生きる環境があるわけなのです。

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