百貨店の次はテレビ、雑誌が崩れる

最近、テレビを見ると気づくことがある。それは吉本をはじめとする芸人が出演するトーク番組や爆笑ネタ系の番組がとても多いということ。そしてそのセットの作りが年々、簡単になっていること。まあ金屏風の前の机に座って話芸のテクニックで盛り上げ、話を聞くというパターンである。たまにロケがあっても街角で何か面白いネタをやるという形となっている。これは明らかにセットの製作や衣装や小道具の準備が少なくてすむパターンである。どう考えても制作費をあまりかけなくてすむ番組がゴールデンタイムでさえ増えているのである。吉本やジャニーズなどの絵になるタレントを打ちだしても彼らに対するギャラぐらいですむので間接的な費用はかなり押さえられているはずだ。

ところが、このような番組ならばネット経由の画像配信などであればさらにローコストに製作することができるし、そもそも素人でも相当面白い人間が世界中にはいっぱいいる。その証拠はユーチューブなどをみればわかるはずだ。そのような個人や弱小資本にでも類似で製作できる番組レベルにテレビ局が入っていくことはどう考えても逆効果だと私は思っている。テレビ局はテレビが活きる使い方～公共性や信頼性が武器になったり、準備に時間がかかったりする部分に注力せず、爆笑トーク系とテレビショッピングに番組枠を譲りわたしてロクなことはないと思う。多分製作サイドもわかっているはずなのに高コスト体質を当面支えるためにはしかたがないということなのだろう。

雑誌や新聞社もしかりである。年々、販売部数が減少してきているのが出版業界である。ただし業界全体ではさらに競争が激しくなってきており、消耗戦の域に入っている。そこへ黒船のiPadやキンドル出現だ。そもそも軽めのスポーツ新聞や芸能系の雑誌程度の内容ならばインターネットでも同程度の情報は無料でいくらでも手に入る。そのうちに有料で買う方がおかしいというように考える世代が中心になってくることも間違いない。今の高校生などは音楽番組があまりなくても最新の音楽情報は手にしているしアイドルの動向にはとても詳しい。テレビや雑誌以外の媒体から情報を入手しているわけだ。

そう考えるとFreeの世界も新しいFreeが古いFreeの世界を駆逐していっていることがわかる。リクルートの無料情報誌として急成長したホットペッパーなどもやがて電子媒体だけしか必要ない状況になっていくのだろう。どう考えてもそうなるというシナリオの精度の方が高い。

しかし、その渦中にある企業では経営者も現場もなかなか変わることができないはずだ。ＪＡＬにしても百貨店にしても新興企業の急迫が事実として認識されていたにも関わらず決定的なインパクトが会社に与えられない限り変わることができなかったのである。つまり内側からの改革は行政だろうが、民間だろうが実は相当難しいのである。緊急時の改革で最も効果的なのは相当強い外圧がかかることである。われわれコンサルタントは「社外で一定の見識をもっているコンサルタントからみてもそう見えるのだから、やはり直していきましょう」という”ネタ”として利用されることも多い。社内の改革派と保守派が本論以外の部分で権力闘争を巻きおこさないようにするための工夫として起用されることも実際にとても多い。

理由はどうであれ、コンサルタントとしては追いかけなければならないテーマが日本全体の国力の盛衰や有名企業の浮沈に関わることも多くなってきている。世界中、「追い上げる新興国（新興企業）、苦戦する先進国（先発企業）」という図式が広がってきている。多様性はとても大切だが合理的経営を模索すると有力企業一極集中化現象がどの業界でも進行していくということになる。

景気の回復の足音が聞こえてくると同時に、崩れる業界からの仕事の依頼も増えてきている。答は従来の成功法則を一旦白紙として考えてお客様視点であるべき姿を再構築していくということになる。自分達の企業の資産の強み部分を再認識してチャレンジするビジネスを構築するしか手はないというのが現実なのだ。

６月には大阪で２回目となる新規参入ビジネスモデルフェアを開催することが決まっています。低成長成熟化社会の日本でこれから伸びるビジネスを紹介しようと準備中です。お楽しみにしていてください。
随時情報を公開していきます。