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見えているのか。JALの出口戦略の方向性

JALの法的整理が始まります。会社更生法によって公的資金が投入され、再生が始まる予定です。マスメディアで連日騒がれており、ワイドショー的な話題としては興味深いこと多々あるのですがコンサルタントとしては複雑な思いです。

それはJALの問題が決してJAL固有の問題ではないという思いが強いからです。世界的な航空機需要が縮小するなかアメリカ、日本という経済大国では活発な経済活動と持続的な発展によって航空機の需要も右肩上がりだったわけです。ところが数年前にはアメリカの市場で日本の民事再生法にあたるチャプター11によってユナイテッド航空など世界的エアラインが破綻から再生の道を模索せざるをえなくなりました。そのような環境変化の中、サウスウエスト航空に代表される大型機中心のハブ&スポークスの戦略と一線を隠した徹底して小型機で稼働率を高めるLCC(ローコストキャリア)と呼ばれる格安航空機会社が急成長してきました。このような環境変化の中でJALは旧来型の大型機を使用した欧米路線中心の大量輸送型戦略を採用し需要回復を待ち、高コスト体質を直すことができませんでした。これに対して全日空が路線別の収益の適正化を図るために、採算性の悪い路線には小型機を投入し、欧米線はコードシェアによって収益確保を図りながら、自社は成長余力が大きいアジア路線に重点をおき、オール・ニッポン・エアウェイからオール・アジア・エアウェイに脱皮を図るという違う戦略を採用しました。その差が今日の結果につながっているわけです。

世界トップクラスの航空会社でも利益が出ない時代となっていることは明らかに規模のメリットだけを狙った戦略では勝者になれない時代となったのに転換が遅れた結果だと思います。そういう中で最大の課題であった年金問題とパイロットで2000万円クラス、ベテランのアテンダントで800万とも言われる高額報酬の見直しや機体更新も遅れ、今日に至ったわけです。こういう状態は実は地方百貨店や、ファストファッション型の店舗に攻勢をかけられるアパレルメーカーなども同様の構造にあるわけで決してJALだけの問題ではなく、日本の高度経済成長を支えたビジネスモデルの主役であった企業の多くが抱える構造問題なわけで解決が急がれますし、JALの問題から学ぶ部分が多くあるわけです。その解決には経営の原理・原則である顧客目線での時流適応、一番主義の適応が必要だと思うわけです。

本年も仕事の関係でJALにもう何度も乗りました。その中で気になるのは機内の新聞サービスを中止したりするだけでなく上級者専用の空港ラウンジが全日空のラウンジと比較するとかなり貧相なサービスに変わっていることです。FSP(フリークェント・ショッパーズ・プログラム)は顧客カードを利用し、買い上げ金額によって上級顧客に厚いサービスを施して顧客を囲い込む戦略で、その源流はFFP(フリークェント・フライヤーズ・プログラム)と呼ばれるマイレージを利用した航空会社のサービスが源流です。そのFFPのサービスの一環のラウンジが現在のように節約ムードになるということはJALの問題が出口戦略が理解されていないか経営問題によって経営陣のリーダーシップが徹底されていないかのどちらかであると思います。どう考えてもリピーターの利益率が高い航空機産業で上級顧客が利用するラウンジのコストカットを図るなど経営原則からすると言語道断。再建などままならないと言わざるを得ないわけです。そういう方向にいくなら、日本を代表する航空会社から会社を解体して無駄なサービスを省きフラッグキャリアの役割を全日空に担ってもらうしかないはずです。

JALの問題を普段の仕事やクライアントの課題解決と重ねあわせ、更に船井総合研究所自体の仕事の仕方、構造とすりあわせて考えれば、かなり深い学びとなります。

  • 作成:2010-01-19 (火) - 岡 聡コンサルタントブログ
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