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人口縮小時代のチェーンストア戦略

チェーンストア理論で有名な日本リテイリングセンターの渥美俊一先生が死去された。西の船井、東の渥美として小売業が躍進し光り輝いていた時代の花形コンサルタントの方です。日本がまだまだ貧しかった時代に、アメリカの小売業を範として、生活者により豊かな生活を提供するためには、小売業がよりよい品質の商品を、より安く提供していく仕組みが必要という観点で小売業のビッグストア化と多店舗化による仕組み作りあわせて人材の育成を提唱し、流通の無駄を排した小売価格の引き下げを研究されていました。われわれ船井幸雄先生を祖とする船井総研は一番店主義を標榜するコンサルタント会社ですから、競合が激しくなってしまうと標準型の面白みのない店舗にはお客様はやってくるはずもなく、勝ち残れないという視点ですから、そもそも論として論点が違うわけですが対比されることの多かったコンサルタント会社ですから、それなりに感慨深いものがあります。日本の流通企業が徐々に輝きを失う時代にまさに巨星堕つという感覚です。

最近はまだまだ先だと思っていた日本の構造問題の先鋭化が顕著となり、一般紙でも話題になるようになってきました。1つは財政赤字に端を発する税の問題です。消費税と法人税をどうするかです。そして1つが日本国内の需給ギャップの大きさです。その原因は明るい未来が見えない日本国内では出産を控える夫婦が増加し、少子高齢化が進んでいること。将来への不安から消費意欲が高まらないこと、グローバル化に伴う低価格の商品の国内流入により製造業の海外移転が続き、雇用の縮小から失業率が高まる中、所得の低下が進んでいること、世界に誇れる新しい価値創造が可能な新しい産業が生まれていないことなどです。

先日、中国に行って感じることは、中国の新聞も、テレビも、インターネットも検閲制度が存在することもあり、国の成長や躍進を伝える明るい話題ばかりのニュースや話題ばかり放送されているのに対して、日本は政治や経済の停滞、失業や就職難や猟奇的な事件の報道か能天気で逃避的なお笑い番組、グルメ番組ばかりの放送しか見当たりません。明るい話題で埋め尽くされ、成長を信じている中国の国民と暗い話題で埋め尽くされ将来への不安を感じている日本国民との落差が顕著になってきていることでした。これはとても都合が悪い事実です。不景気感が更なる不景気の連鎖を生み出し、長い低成長時代がさらなる低成長でも仕方がない空気を生み出しているわけです。

流通企業の経営コンサルタントである私は、同じような空気を感じることがよくあります。それは経営不振に陥ってしまった小売チェーンのコンサルティングの現場でです。多店舗経営を続けてはいるものの、予算達成を実現している店舗はわずかで多くの店舗が売上不振に陥り、社内のムードは悪く、ベテランの経営幹部は過去の成功体験にとらわれるばかりで、新しい業態開発や事業への進出に否定的であり、若手の社員はポスト不足の中で見本にする先輩さえ見出せず毎日の仕事は単に時間だけ働き給料をもらうためだけにはってしまっている。リストラがしばしば話題に上る中、働きのわりに高賃金なベテランを排除できずに四苦八苦するというような流れです。当然、コンサルタントですから、再度自信回復して成長を思考できるように勝ちパターンのフォーマットや業態開発を提案し、そういう環境の中でもやる気のある新リーダーを中心に復活を狙うという構図を作り上げるのですが、日本の経済全体も、そして流通企業の現場も良く似た空気と環境が蔓延しているように感じてしまいます。日本も流通業ももっと元気になって欲しいので、今回は普段の仕事の中でチェーン店企業の復活の急所を整理してお話していくことにします。

・既存店の状況をチェックし、全店で何が起こっているかという事実のチェックを行う
・特に人口縮小時代の成功法則は大きすぎる店舗、広げすぎた店舗の中の不採算部門やスペースの見直し、不採算店舗のリロケーションや閉鎖が必須であると自覚する
・利益構造を直視し、利益部門の拡大と不採算部門の縮小を勇気をもって断行するために標準フォーマットの定義の見直しとゾーニング・レイアウトの抜本的見直しに取り組む
・圧縮付加の理論に基づき空きスペースや暇な人員に新しい商品や仕事を付加する
・公平な人事制度、評価制度を採用し、やったらやっただけもらえるムードを社内に醸成する
・国内だけの意識をすて、海外での事業展開、海外相手の事業展開を考える

以上のようなことです。特に全国の出店店舗の配置見直しなどは急務になっており、依頼の多い案件となっています。やはり小売業は店舗網を売って儲かるように配置することが基本となるわけです。やれるところまでこれまで同様の手法で走り続けて、突然死を迎えるという企業も多く見受けられます。これはとてももったいないことです。ぜひこの当りのことで課題をかかえている企業はご相談ください。時代のキーワードは「大きいことはいいことだ」では既にありません。”ジャストサイズ”な店舗政策を作り上げることが人口縮小時代の重要キーワードとなってきているのですから。

  • 作成:2010-07-27 (火) - 岡 聡コンサルタントブログ
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